月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る
「そのホストが現場から立ち去った男なのか」

「そうだと見てるんだけどね」

「歯切れ悪いな」

達郎の言葉にあたしは首をすくめた。

東久志への事情聴取と、その裏付け捜査をした人間は皆あたしと同じ感想を抱いたのだ。

「東久志本人に話を訊いてみる?」

そうすればあたしが歯切れ悪い理由わかるから。

そう続けた後で捜査協力の要請しといてナニを言ってるんだと思った。

「じゃそうしよう」

幸いにして達郎は怒らなかった。

イタイこと言ったあたしに気を使ってくれたのかもしれない。

「でもその前に」

安堵したあたしを見ながら達郎はジャケットの内ポケットに手を入れた。

そこから取り出したのは2本のスニッカーズ。

まるで手品師のような手つきだった。

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