月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る
「何もせずに立ち去れば目撃証言のない通り魔殺人として迷宮入りする可能性もあった」

その通り。

「東さんを容疑者にするよりは、そちらの方がリスクが低い」

警察の追及に東が屈する可能性はゼロではない。

「なのにあなたがあんな芝居をしたのは、どうしても東さんを容疑者にしたかったからだ」

達郎が言おうとしてることは、やはりあたしの思った通りのことだった。

「横倉さん。あなた初めから東さんを殺すつもりだったんでしょう?」

横倉は東を自分から吉原しのぶを奪った相手として心底憎んでいた。

だから吉原しのぶ殺害の罪を着せたまま、この世から消そうとしたのだ。

「本当に何もかもお見通しなんだな、あんたは」

横倉はそう言ってクックックと喉の奥を鳴らして笑った。

横倉の顔からは人間らしさというものがそげ落ちたように見えた。

小山洋子は横倉を自信家と称した。

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