ウェンディ~君に贈る花~
駅にはこの鍵と同じ見た目をした鍵が差し込まれたコインロッカーが沢山あった。
鍵が差し込まれていない『010』のロッカーの存在を確認すると、万が一に備えて周辺に人がいなくなるまで待つことにした。
(他人を巻き込むわけにはいかないからな)
ロッカーから少し離れた場所にあるベンチに腰をかける。
するとあの鳩が寄ってきて、俺の肩に飛び乗った。
「……」
(目立つだろ……!)
ただでさえいい男なのに、これでは余計に注目を浴びてしまう。
肩を揺すっても小声で「あっち行け!」と言っても肩から降りる気配がない。
諦めて溜息をつくと、赤いパーカーを着た七、八歳くらいの女の子が駆け寄ってきた。
「おにーさん」
大きなくりくりした目で俺を見上げて言った。
「いそいだほうがいいよって」
「えぇ?」
突然の言葉に首を傾げる。
なんだ?この子は。
「ちがうおにーさんがいってたよ!」
そう言って笑うと、「ばいばい」と右手を振って改札の方向へ走り去って行った。