その手に触れたくて
来たものの、ここからどうしていいのか分からないあたしはソワソワしだす。
辺りを見渡しても隼人の気配すらなく、ただただ立ち止まっているあたしに、
「おっ、美月ちゃん…」
その声に反応して振り替えると、何故か上だけ私服を着た敦っちゃんが居た。
「あ、えっと…隼――…」
「こっち来い!!」
「痛いって!!」
あたしが言い掛けた言葉を遮って聞こえたのは怒りに満ちた隼人の声と、女の叫び声だった。
その方向に視線を向けると隼人は不機嫌オーラ全開で先輩の襟首を掴んで歩いて来る。
そんな隼人はあたしに見向きもせずに真ん前を通り過ぎ――…
「何怒ってんだ…アイツ…」
隣から敦っちゃんのため息混じりの声が聞こえた。
敦っちゃんは隼人の背後を目で追った後、ゆっくりと視線をあたしへと向ける。
その敦っちゃんの視線と絡まり合った時、あたしは徐々に視線を下に落とした。
そんなあたしに敦っちゃんは何も言わなかった。この異様な空気に敦っちゃんは何かを感じたのか、何も口を開く事はなかった。