その手に触れたくて

「履き替えて来い」


下駄箱まで来ると隼人はあたしの腕を離し、自分の下駄箱へと行く。

履き替えて…その後どうすんだろう。と、思ったけど、今の隼人には何も聞けなかった。


隼人はきっと怒ってる。あたしが何も言わなかった事に怒ってる。

あたしが先輩と隼人の場所から離れた後、何を話してたのかも、ちょっと気になる。

そして今、隼人が思ってる事も全て気になる…


靴に履き替えて呆然と立ち尽くしていると、隼人の影が目の横のほうで微かに入り、あたしは隼人に視線を送った。

隼人はあたしを見ると何も言わずに足を進めて行く。


やっぱ隼人は怒ってる…そう思うと隼人に着いて行く足取りも凄く重くって鉄の様に感じた。


「…隼人?…怒ってるよ…ね?」


自転車置き場に向かう途中、小さく隼人の背中に声を掛けると隼人は進めていた足を止めた。


「…怒ってねぇよ」


隼人は一度、ため息をつくと小さく不機嫌そうな声で呟く。

呟いてすぐ、止めていた足を進めて自転車置き場へと向かう。


やっぱ…怒ってんじゃん。その不機嫌さと、そのため息は怒ってるって証じゃん…。


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