その手に触れたくて

「隼人…泣いてんの?」


あたしの肩から一向に顔をあげない隼人に、あたしは小さく声を出す。


「泣いてねぇよ」


暫く経ってそう呟いた隼人はあたしの肩に埋めていた顔を上げ、自転車のハンドルを握った。

ふ、と一瞬だった。スッとあたしの肩から顔を逸らす瞬間、隼人の目が潤んでたのが分かった。


…隼人?

でもそんな表情をする隼人にあたしは何も言わなかった。何も言えなかった。


隼人はサドルに跨り、あたしを見てすぐ視線を後ろに落とす。

それが乗れって言う合図だったから、あたしは何も言わずに隼人の後ろに乗った。


隼人があんな悲しそうな瞳をするからあたしは思わず隼人の腰に腕を回し力強く抱き締めた。


隼人は何にも悪くないよ?
あたしは大丈夫だよ?

でも正直、凄く先輩がまだ隼人を想ってるって分かった時は涙が溢れそうだった。でも、隼人が“一番に考えたい奴が俺にはいる”って言ってくれた時は凄い凄い嬉しかった。


あたしも隼人とずっと居たい。


隼人しか居ないもん。





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