その手に触れたくて

こんなに時間が経つのが遅く感じるのは初めてだ。

夏美と相沢さんと別れて帰った後、あまりにも時間が経つのが遅いと思った。


何をするにも、何をしてても時間が遅いって感じるのは初めて。その遅いと思う時間をあたしは苦痛と思いながらも毎日過ごした。

夏美と相沢さんと過ごす中、終業式も終わり夏休み突入の最初の日曜日に、あたしは長かった髪をバッサリと肩まで切った。


乾いた空気もベタベタ汗ばむ肌も何もかも嫌な夏。だから気分転換に思いきって髪を切って、前よりも少し明るく髪を染めた。


鏡を見る自分がまるで自分じゃない様に感じる。でも、何だかそれが良かった。


「うわっっ!!美月どーしたの、その髪」


切ってから1週間経ったある日。夏美と相沢さんが待っているその場へと駆け寄る。

夏美は目を丸くして驚いた表情であたしを見た。


「切っちゃった」


薄ら笑うあたしに夏美も相沢さんも、まだ驚きの表情を変えない。そりゃあ、そうだ。あんなに長かった髪を予告もなしに切ったんだから。


「ってか、やけにバッサリいったね」

「うん、暑いしさ。楽でいいよ」

「ビックリしたぁー。でも美月ちゃん凄い似合うね」


相沢さんは微笑む。


「そうかな?」

「うん、似合うよ。あたしも切りたいけど勇気ないよー」


そう言った相沢さんは顔を顰めて自分の髪を指でクルクルと巻いた。


「あたしもー。つか、美月短い方が似合ってんじゃない?うん。余計に可愛くなった」


そう言った夏美に何だか恥ずかしくなった。







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