天然彼氏。
君に心配をかけさせないために、なんとか鼻声で誤魔化そうとしたのだけれど――


「ひゃ……」

不意に伸びてきた君の手のひらに、熱く火照ったおでこを優しく擦られて、軽いめまいを起こしそうになった。

体温の低い君に触れられると、自分がどのくらい熱くなり過ぎているのかが、ますます自覚させられて恥ずかしい。


(もう駄目だ。死ぬ……今なら死ねる)

このまま息絶えてしまおうか……とわたしが悶々と考えていると、上から覗き込む君が悲しそうな顔をして呟いた。


「すごい熱がある……こんな状態じゃ、買い物なんて行けないよね……」

「え……ぁっ」

そうだ、君と一緒に買い物に行く予定だったんだ。


(いや――本当は告白したんだけど……もうこの際どっちでも嬉しいからいいや)

ハッと思い出したように顔を上げると、ぎゅっと拳を握り締めながら、君を見つめる。


「あ……の、熱はない、です。……だから、一緒にお買い物に――」

「でも……無理をさせる訳にはいかないし……家でゆっくり休んだほうがいいんじゃない? また体調がいい時にでも行けばいいから……ね?」

「………」

わたし、バカだ。


(君に緊張して嘘ついて……過分なほど心配してもらっているのに、勝手なこと言って困らせて――)

……泣いちゃいたい。


自分勝手すぎる自分が悔しくて悔しくて……目尻から堪え切れなくなった涙が零れ落ちてしまう。

とにかく今は、こんな状態のわたしを君に見せるわけにはいかない――


「ほんとに、ごめんなさいっ……!」

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