上海ふたりぐらし
 病院に着くと、早速問診の開始。中国人のお医者さん。しんどいのに、医療通訳がいるのに、やっぱり中国語に触れていることが嬉しくて、全部中国語で受け答えしている私。ベッドに横たわると、腕と腰に注射された。もちろん何の薬か、説明はない。その次は点滴。2本しないといけないらしい。1本2時間ぐらいかかると言われた。
「えーっ。そんなの帰るの夕方になっちゃうよ。」
 そして、更に先生は部屋を出るとき、
「今日は、帰れませんからね。入院してもらいますよ。」
「どうして?」
 結局、採血もされて3日間の入院を言い渡された。
 急に入院って言われたって、入院の準備なんてして来てないし、第一子供はどうするのよ。息子はM子が預かってくれる、と言ってくれた。彼女の好意はすごく有難かったけど、やんちゃな息子を簡単に人には預けられない。同室にベッドをもうひとつ運び込んでもらって、一緒に「入院」することにした。息子は私が点滴していることなどお構いなしに、ベッドによじ登ってくる。私の腕には、針が刺さってるっつーの。
 息子は家から持ってきた「かちかち山」を、中国人の看護婦さんに読んで聞かせてあげたりしていたが、すぐにすることがなくなって退屈してしまった。私は休みたいのに、眠ることもできないでいた。そのうち、看護婦さんが隣の部屋でDVDを見せてくれたので、なんとか休むことができた。
 私もそろそろ退屈してきたので、看護婦さんが来るたびに聞いた。
「明日、退院できる?私、家に帰りたいの。」
 答えは、いつも、
「ダメ、月曜日までは病院にいてね。」
 私があんまりしつこく聞くものだから、しまいにはドクターから、
「これは、あなたが決めることじゃない。ちゃんと私のいうことを聞いてもらいますからね。」
と、言われた。
 ところで、私はどこが悪いの?血液検査の結果はいつ出るの?どうして明日、帰れないの?疑問ばかりが頭に浮かぶ。お風呂に入りたいよ。着替えしたい。洗濯物とりこみたーい。
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