ぼくらの事情
理事長から受け取った調査書を握り締め、廊下を歩いていた響生の顔はいつものキリッとしたポーカーフェイスに戻っていた。
しかし、それも束の間、
「あっ、おかえりー響生」
「親父さんなんて?」
観音開きの生徒会室の扉を開け入るなり、部屋の真ん中を陣取るソファーにどっかりと座り込んだ。
偉そうにソファーにふんぞり返ったその表情は、理事長室での顔と同じ。
物凄い不機嫌面だった。
「不機嫌面の原因はこれか?」
向かいのソファーに座っていた副会長、南方 架(かける)が響生の投げ捨てた調査書を拾い上げて目を通していく。
「なになにー?」
その隣でお菓子の袋を抱えていた書記、柊木 咲奈(さな)が汚れた指を舐りながら調査書を覗き込んだ。
「綺麗な娘じゃん。生徒会役員候補か?」
「……にしては頭悪くない? 学校もあんまり来てないし」
まじまじと調査書に目をやる二人に特大の溜め息を漏らし、響生は長い手足をさっと組んで座り直す。
「課題だ。そのアホ女を更正しろって」
しまいには舌打ちまでかまして調査書を睨み付ける幼なじみに、思わず二人は顔を見合わせた。