ぼくらの事情

テレビの画面がピンクから黒に変わったことに気付いたらしく、漸く耳から両手を離した響生がペットボトルの水をがぶ飲みする。



「響生さ……ムラムラってきたらどうしてんの?」


「んなの、水飲んでれば治まるだろっ」



これが響生じゃなかったら、大笑いしてツッコんでるところなのに……。



「……なぁ、一人か二人紹介しようか? 女の子」


「はぁっ!?」



このままでは響生が二次元とか、フィギュアとか……なんか特殊な方向に向かってしまうかもしれない。



それを懸念した架の思いなど知る由もなく、


「いや……あまりに不健康っていうか……」


「なんで?」


珍しく言い淀む架を、不可解そうに響生が見つめていた。



「だってさ、女の子の柔らかさも知らずに高校生活送るなんて……」


「おまえ! さっきから何言ってんだよっ!」



心底憐れみに満ちた架の表情がやたらに苛立ち、堪りかねた響生が声を張り上げて怒りだす。


そこへ、


「あっ、こんなとこに居たんだ」



いつの間にかお風呂から上がった女子たちが、ひょっこりと顔を出したから響生の心拍数は一気に跳ね上がる。
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