ぼくらの事情
次に目を覚ました響生の眼中に飛び込んで来たのは、
「あっ、気が付いた」
手にした濡れタオルを、自分の頬に当ててくる絆の姿だった。
「急に倒れたりして……響生って実はひ弱なの?」
「んなワケねぇだろっ!」
ちょっと本気で心配そうな絆の表情が癪で、声を張り上げた勢いで体を素早く起こした。
「そんなデカい体してんのにひ弱なワケないじゃんっ、ここちゃん」
「そうそう、響生はひ弱じゃないよ。ヘタレだよ」
絆の背後から現れた幼なじみたちは、アイスにかぶりつきながらケラケラと笑っている。
「もぉ。倒れた時くらい優しくしてあげなよー」
それを呆れたように一瞥し、絆は小さく溜め息をついた。
「何言ってんの絆嬢。俺たちがしない分、絆嬢に一杯介抱して貰えんだろ。俺たち優しー」
「そうだよっ。響生は一杯相手して貰ったんだから、いい加減ここちゃん返してよね」
せっかくお風呂上がりはゲームで盛り上がろうとしていた計画を邪魔され、プリプリと怒る咲奈が絆の手を取って部屋から出て行ってしまった。