ぼくらの事情
「……優しいよなー。まさか、エロいコト考えて倒れたなんて知らずに介抱してさ」
手に持っていた未開封のアイスを差し出しながら、ニヤニヤと笑う架を恨めしそうに睨む。
「そんな優しくて可愛い絆嬢を、澪路さんはなんでフッたりするかなー」
「……何が言いたいんだよっ」
架から渋々受け取ったアイスを頬張り、澪路のベッドから立ち上がった響生の目の前に、
「さっきさ、ちょーっとだけ部屋の中見せて貰ったら出て来たんだよねぇ」
やっぱり食えない爽やかな笑顔を貼り付けた架が、何やらポケットから取り出して見せた。
「……これっ」
目の前に出されたのは、少し色褪せた写真。
そこに写る幼い頃の絆を抱き上げる人物を、響生は食い入るように見つめる。
「……澪路さんの理由ってさ、もしかして」
架と響生の中に浮かんでいる言葉は、多分同じ。
頬張ったアイスが溶けるのも、まばたきするのも忘れ、写真を持ったまま立ち尽くす響生の前に、
「ねぇっ! 二人とも早く降りて来なよ」
何故かマシンガン片手に現れた絆の目は、ランランに輝いていた。