ぼくらの事情
夜も更け、
「こうやって寝るのって、修学旅行みたいだねっ」
薄暗い部屋のベッドに潜り込んだ咲奈は、ぼんやりと見える絆の顔を見やりながら人懐っこい笑みを浮かべた。
「……わかんない。わたし、中学の修学旅行参加してないからっ」
それに小さく笑い返した絆の顔は、暗がりに慣れてきた咲奈の目に寂しげに映る。
その手を気が付けばギュッと握り、
「大丈夫っ! 今年は参加するでしょ?」
ニッと笑ってみせる咲奈に、絆の二重が大きく揺れ始めた。
「ここちゃんとはクラスが違うから、きっとクラス別行動の日は響生の機嫌が悪いんだろうな……」
「…………」
「架はそういう決まりとか平気で無視しちゃうから、絆嬢ご機嫌よーとか言いながらここちゃんのクラスに紛れ込むよ。多分」
咲奈の弾んだ声と楽しそうな表情をじっと見つめ続ける絆に、
「部屋割りはクラスの子に話して替えて貰うから咲奈と一緒だよ。自由行動の日は響生も一緒で……」
じわっと湧き上がった涙に、咲奈は見て見ぬふりでまぶたを閉じた。