ぼくらの事情
「……響生ばっかり抜け駆けしてるけど、ここちゃんのコト好きなのは響生だけじゃないんだからねっ」
そのまま細い両腕で絆を抱き締め、ヨシヨシと頭を撫でてやる。
「あり、がとう」
しゃくりあげて詰まる涙声に、
「ありがとう、じゃないよっ。こういう時は、わたしも好きだよって言うのっ」
照れくさいのを隠すように、咲奈が泣き顔の絆にこう告げる。
「架くんと響生にも?」
「ダメダメ。架に言ったら、合意の上だねって笑顔で襲われちゃうよ。響生は……多分固まる」
「確かにっ」
いつの間にやら涙は渇き、絆の目には楽しそうな笑顔が浮かんでいた。
女子たちがベッドの中で親睦を深め合っている中、
「俺、客間借りるから。おやすみー」
澪路の部屋に一人残された響生は、まぶたの裏にこびり付いた生々しいゾンビたちの映像に、幾度と無く寝返りを打つのだった。