ぼくらの事情
「バカっ。せっかく絆嬢自ら来たんだぞっ。もっと寝顔を堪能しろっ」
「そうだよっ。起きたらここちゃんが居ないから探してたらこの部屋が開いてて、中見たらこの有り様だもんっ。かなり貴重だよっ」
この友達思いなんだか違うんだかわからない思いやりに、
「でもっ!」
さすがにこの状況はマズいのでは、と響生がベッドから降りようとするより先に、
「んー……あ、れっ」
絆がとろーんと微睡んだ瞳を宙に泳がせ、むっくりとベッドに座り込んだ。
呆然とする三人の顔を二~三度往復した後、
「えっ!? なんでっ?」
漸く意識がハッキリしたらしく、その場に居た誰よりも驚いた声を上げている。
「それはこっちのセリフだっ!」
「そうだよ! ここちゃん自分から響生のベッドに入ったんだよ!」
憤る響生と咲奈を交互に見、ポリポリと頬を掻いた絆は、
「ごめんごめん……つい、いつもの癖で澪ちゃんのベッドに入っちゃったみたい」
はははっと笑ってみせるものの、その場の誰一人として笑っている人なんて居なかった。