ぼくらの事情
「今後一切、澪路くんはここちゃんと一緒のベッドに寝たらダメだからねっ!」
今朝の一件を説明し、更にクドクドと説教をたれる咲奈に、
「はははっ。響生得したなー」
「笑い事じゃねぇだろっ!」
カラカラと笑って流す澪路は、正面に立つ響生の神経までを思いっ切り逆撫でした。
「そんなこと言ったって、絆が入ってくるんだからしょーがないだろっ」
それを知ってか知らずか、何の悪びれた様子もなくサラッと言われた言葉に、
「だから澪路くんがそれを止めろって言ってんのっ! 澪路くんの方がお兄ちゃんでしょっ!」
声を荒げた咲奈はまるで、どっかのお母さんみたいな口調で澪路を叱りつけた。
「わかったわかった。気を付けるよ」
それを小さく笑って交わす澪路は、顔も声もいつも通りのままだった。
そんな澪路が不自然だと感じたのは、響生の勘違いだったのか。
「ちゃんと気を付けるから、下降りてケーキ食べよう」
こう言って咲奈を促す顔は、いつも通りの笑顔に戻っていた。