ぼくらの事情
「それで? 問題の我らが姫の部屋はどこなんだ?」
「二階の奥らしい」
鍵を預かった時に聞いた部屋の場所に向かうため、階段に手をかけた響生はズカズカと二階へと足を進めていった。
学校に行かせる為とは言え、初対面の人間の家にあがる方もどうかと思うが……鍵を渡したり、部屋の場所を教える母親もたいがいだ。
これから対面する彼女を哀れみ、架は堂々とした響生の背中にこっそりと溜め息をついた。
「ここか?」
「とりあえずノックしてみよ」
廊下を曲がった所にポツンと現れた扉に咲奈は歩み寄り、
「おーいっ! 朝ですよーっ!」
相手の迷惑など一切考えず、豪快な音を立てながらそれを叩いてみる。
扉が開いたら何て言って事情を説明したら良いものか……。
握り拳で思い切り扉をど突く咲奈と、何食わぬ顔でその隣に立つ響生に架の溜め息は止まらない。
「まだ寝てるのかなぁ~」
「……いや。中でビビってるんじゃない? 普通」
さすがに、朝一から見知らぬ声で扉をガンガン叩かれて平気な人間は居ないだろう。