ぼくらの事情

そんな架の心配を知ってか知らずか。

これだけ騒ぎ立てられても一向に扉が開きそうな気配は無かった。



怪訝そうに扉を見つめる咲奈を押し退け、


「ビビってようが知ったこっちゃねぇし」


「えっ! おいっ、響生!」


苛立たしげにドアノブを掴んだ響生は、架の制止も無視して勢い良く部屋の扉を開いた。



「ーーッ!!」



開いた扉の先で一番に飛び込んだ光景。


掛け布団をすっぽりと頭から被った女の子が、顔面蒼白で声を失っている姿だった。



「おはようございます、初めまして! 生徒会書記の柊木 咲奈ですっ。よろしくねーっ! 美園沢 絆ちゃんっ」


「はっ!?」



勿論そんなことは扉をガンガン叩いてビビらせていた張本人は構うはずもなく、



完全にパニクっている彼女に人懐っこい笑顔を向けて、まくし立てるような挨拶を一気にかましている。


更には唖然とする彼女に口を挟む隙も与えず、



「眼鏡で体も態度デカいのが俺サマ生徒会長サマの加治原 響生。んで、隣の自称常識人面してるムッツリが南方 架。副会長だよ」


本人たちには不本意と言わんばかりの紹介までしてしまうから厄介だ。
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