ぼくらの事情
不信感剥き出しの眼差しで三人を睨み付ける彼女に、さすがに自称常識人の架も取り繕う術が思い付かない。
架の唇から今までで一番特大の溜め息が漏れた瞬間だった。
「おいっ。アホ女」
腕組みをした如何にも、小馬鹿にしてますオーラ全開の響生がベッドに座り込んだ彼女を見下ろしている。
「…………」
呼ばれた本人は、まさか自分のこととは思わず、斜め前に居た不審者その一の咲奈に目を向けていた。
「ちょっと~。響生が呼んでるのは咲奈じゃなくて、アナタだよっ」
「はぁ?」
思いがけない指摘に、咲奈に差された指は見間違いじゃないかとさえ思えてくる。
しかし、
「少なくとも、下から数えた方が早い成績してんのはこの中じゃおまえだけだ。わかったか、アホ女」
学年トップクラスの成績を誇る生徒会役員三人組を、アホと呼ぶ人間は居ない。
嫌味な笑顔を貼り付ける響生に、
「……わかんないわよっ! 他人の家に勝手に入ってくる人たちにアホ呼ばわりされる覚えは無いわっ」
「……確かに」
納得がいくわけもなく、声を張り上げて返した言葉に響生の後ろで架は何度もうんうんと頷いていた。