ぼくらの事情
「さっさと出て行って! ママに何を言われたのか知らないけど……わたしは学校なんか行かないから!」
慌てて自分の携帯電話を拾い上げた響生を睨み付け、絆は真っ直ぐに部屋の扉を指差していた。
このままでは、みんな仲良く退学コースまっしぐらだ……。
架の頭に高校中退の四文字がデカデカと浮かび上がった。
「いやぁ……そう言わずに」
こうなれば揉み手でもしながら、菓子折りの一つでも渡してご機嫌を直してもらうしかない。
そう思い、出来るだけ人当たりの良い笑顔を浮かべた架の隣で、
「まともに学校に来ないサボリ魔が偉そうな口叩くなっ!」
「響生っ!?」
全てを水の泡にしてしまう幼なじみの態度。
架の顔色は一気に絶望一色へと変わってしまった。
「わたしが学校サボったってアナタたちに関係ないでしょっ!」
一触即発で睨み合う二人の間で、咲奈も困ったように交互に様子を窺っている。
このままでは更正どころか、ますます絆の学校に行く気が減少していく一方だ。
「全く関係無いな。おまえがこのまま留年しようが退学しようが、俺の知ったことじゃない」