ぼくらの事情
「おい響生……」
冷たく言い放つ響生のセリフに、本来の目的を忘れたのではないかと止めに入るも、
「だいたい! 高校中退した人間に明るい未来が待ってるとでも思ってんのか。一度始めた事を最後までやり遂げられない人間を誰が信用するんだよアホ女」
饒舌に毒づいていく響生に架の声など届くワケもなく、部屋に充満する空気は重みを増していくばかり。
言われた本人はただ悔しそうに下唇を噛み締めた後、
「だったら尚更ほっといてよ! さっさと出て行って!」
背中をグイグイ押し、部屋から三人を追い出していく。
「ちょっ、ちょっと待って絆ちゃん」
絆の細い腕からは考えられないような力で押されながら、慌てて咲奈が絆に弁解しようと呼び掛けるも、
「しつこいな……警備の人呼びますよっ」
今度は自分の携帯電話を取り出し、某有名警備会社の名前を画面に映し出して静かにキレ始めたから大変。
咲奈は口を閉ざし、首をぶんぶんと横に振ってみせた。
万が一の為にと、加入していた雅に感謝……と思ったが、よく考えれば母が事の発端だ。
一瞬で感謝の気持ちなんて取り消した。