俺様王子と秘密の時間

◆恋に、終止符



昨日の大雨が嘘みたいに9月の空はムカつくくらいの快晴だった。


それとは裏腹にあたしの心はどしゃ降りで、どんよりとしている。



前の席の羽鳥は頬杖をついたまま、一度もこちらを振り返らない。


いつもはしつこいくらいあたしの方を向いて、他愛ないお喋りをして笑い合っていたのに……。


机のわきには昨日、羽鳥から貸りた服が入った紙袋がかかってる。


お姉ちゃんが洗濯してあたしに持たせてくれたんだけど返すタイミングを逃してしまった……。

というか話しかける勇気がない。



何事もなかったように声をかけるなんて、そんな無神経な真似は出来ない。




もうすぐ文化祭が始まる。

あたしのA組はクレープ屋さんに決まったらしく、文化祭に向けてのプリントが配られた。



窓から入りこんできた生ぬるい風に乗って、羽鳥の爽やかなシトラスの香りが鼻をかすめた……。

 

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