君へのラブソング
俺がまだ小学生だったある日、母さんに内緒で放課後美容院に行った。お小遣を貯めて、髪を切ろう。そう決めてたから。
もう、我慢が出来なかった。赤いランドセルに長い髪、女の子が好き好むようなワンピースやスカート。
女の子を象徴するその全てから解放されたかった。
「切っちゃっていいの?」
鏡越しに美容師さんに言われた。
「はい。ばっさり切ってください。ショートヘアに。」
そう答えると、美容師さんは苦笑いを浮かべ、「もったいないな。似合ってるのに。」そう小さな声で言った。
もったいない?
似合ってる?
そんな言葉いらない。
俺は男だ。長い髪なんて邪魔でしょうがない。
ジョキ、ジョキジョキ…
洋楽のBGMと髪を切る音。
髪が短くなる自分をただじっと見つめてた。