うちのおネコ様


今、中西家のリビングには、ひとりの男の子と1匹のネコがソファで横になっている。


ネコのルディは男の子に甘え、彼のお腹の上でスヤスヤと眠っている。


ネコは一日のほとんどを寝て過ごす。自分もそんなだったかな?と、男の子は頭の後ろで手を組んで、ぶーっと天井を眺めていた。


人間の身体は、思っていたよりもすぐに慣れた。同時に脳の中の「記憶」とよべるのか、いつの間にか組み込まれた「知識」がうめこまれている事に気付き、自分が何者だったのか?と疑ってならなかった。

しかし夜中になり、「声が聞こえたこと」そして自分の目の前に2匹のネコを確認すると、僕は今「何が起こったのか」を少しずつ理解し始めた。


知らないうちに埋め込まれた「記憶」の奥底に、本当の自分の記憶がある。
僕は夜中の間、ずっとその記憶に耳を傾け、目を閉じて静かに思い出すのを待った。


そのうち、兄のハルやルディとの会話、自分の「契約」についての事、飼い主の「美子」の事・・・少しずつだが、「記憶」として引き出しから取り出せてきたのだ。


カインとは誰なのか。僕はそれを思い出そうとしたが、そもそも「カイン」という相手を自分は知っているのか?という疑問も出てきた。


僕は家で飼われているネコだから、他のネコに接触することも中西家の人間以外の人とも接する機会もすごく少ない。そんな中で頭の奥底から取り出せた記憶。

「僕はカインの生まれかわりだ」という事実。


証拠も何も無いのに、それが確かであるという、印象でしかない記憶。


不思議か感覚に戸惑いながらも、しかしそれが誰に続くものなのかという所で、僕は美子の母、「エリ」を思い浮かべた。


ここからはただの僕のインスピレーションでしかないのだが。



きっとカインは、エリと何か関係があったんだろうと思う。


僕は午前中のアルバムから何も収穫がなかった為、次の手を考えていたのだけど、庭から入ってくる日差しがあんまり気持ち良いので、、、


そのまましばらくソファで目を閉じてしまった・・・




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