うちのおネコ様
やがて勤め先のスーパーの袋を両手に抱えた母が帰ってきた。

「ただいま~」
「お、おかえりなさい!!」

美子は自分の心臓にぐっと力をこめた。
来るか、雷!

すると美子の手の中の子猫をみた母は、最初は目を見開いたのだが、次にはぼーっとスーパーの袋をもったままリビングに立ち、雷もおとさなければ一言も発言せず、何かを考えているようだった。


そしてしばらくして、ゆっくりと美子の前に座った。

「う、うちで飼いたいんだ!
だって・・・何回も駄目っていわれたけどさ、やっぱりかわいそうで」
エリは美子の手の中から、子猫をそっと抱きかかえた。
ミー・・・ミー・・・小さな命は懸命に鳴いていた。
初めてみる人に怯えているようだった。

「そっか。。」
母はそういうと、子猫をそっと抱きしめた。


小さい頃、動物を飼いたいといったら、いの一番に反対するのは母だった。
「死んでしまったらかわいそうだから」
そういう理由で拒んできたのだ。
だから動物が嫌いとうワケではないんだと、その時美子は気がついた。

「ちゃんと、お世話できる?」
「う、うん!」
「かわいがるだけじゃ、駄目よ?」
「わかってる!」
「トイレも食事も、遊んであげたりもいっぱいしなきゃいけない事あるのよ?」
「わかってるって!!!」


もう少しだ!もう少しで母に「仕方ないわね」と言ってもらえる!
美子は必死で、自分で責任をおおうとした。

エリはそっと、ネコの顔に自分の顔を近づけた。
「いらっしゃい。あんたも今日から中西家のひとりだよ」

よろしくね、と母は姉や私にむけて言うように、優しい言葉で話しかけた。
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