感方恋薬-知られざる月の館-
「はっはっは。なに、気にする事は有るまいて。男子高校生が、ひとりで、わしの事を騒いで見た処で、周りは一笑に付してしまうだけの事じゃよ」


爺は、妙に楽観的にあたしに向かって話す。


が、あたしは結構不安だった。


何しろ相手は幸だ。


高校入学以来、科学部に籍を置き、なにやら、怪しい機械や薬品を作り出し、ある時は部室ごと自爆、ある時は教師軍団に、たらい回しに怒られて、それでもめげずに、自分の道をひた走る、マッドサイエンティスト予備軍の幸だ。


「でも、でも除霊する装置がどうたらこうたら言ってたけど…」


「ふむ、それは穏やかでは無いが、除霊なんぞ簡単に出来る物では無い。第一に、わしは貴子に取り憑いた悪霊ではないぞ」
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