感方恋薬-知られざる月の館-
そこには、いつも玉座に座っている爺の姿も、若様の姿も無かった。


あたしは、ぼんやりとした意識のまま、ゆっくりと立ち上がると、あたりをきょろきょろと見回した。


「みんな…どこぉ…」


はっきりしない意識の下であたしは玉座に向かってふらふらと歩き始めた。そして玉座への階段を2、3段上ったところで再び意識を失った。

         ★

「う、ん」


あたしは現実世界で意識を取り戻した。そしてふと気が付いた。体の自由が利く事を。確か紀美代に羽交い締めにされてて体の自由が利かなかった筈であったのに。
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