MARRIAGEABLE─お年頃─
ファミレスで4時間程過ごして、それから店外へ出ると肌寒かった。

冷たい夜風から少しでも逃れる為に腕を摩りながら、二人ゆっくりしたペースで歩いて行く。

本当は居酒屋にでも行きたいが、まだ未成年の私たち。

いつも会うのは、近所のファミレス。

ファミレスから少し離れた所にある私の家まで、いつものようにヒロキが送ってくれる。

ヒロキの家は私の家とは反対方向で、私がいつも「大丈夫だから。」と言っても私を一人で帰す事はしない。

夜道を一人で歩く事なんてちっとも怖くないし、一人で歩いて帰る事もよくあるのに。

「一人で帰って何かあったらどうするよ?」

そう言っていつも心配してくれる。

夜道を歩く二人は無言で、パンプスを履いている私の足音だけがカツカツカツと静かな住宅街に響いていた。

店で喋り疲れたのか何故なのかは分からないが、いつも帰りは二人共無言だった。

そんな二人の空気は心地よく、とても落ち着く。

「なあ。」

珍しく話し掛けてきたヒロキに私は顔を向けた。



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