MARRIAGEABLE─お年頃─
「あの……」

なんて言えば良いのか分からなかった。

彼の言った言葉は、私には「ユミカの事が…」そんな言葉に聞こえたが、あからさまに「私の事が好きなんですか?」とも聞けるわけなく…。

曖昧な言葉しか出てこなかった。

『俺さ、気付いたらユミカちゃんの事が凄く気になって…。』

彼は決定的な言葉を言おうとしている。

「・・・・・」

それでもやっぱり何も言葉が出てこない私は口を閉ざし、

『好きなんだけど。』

彼の言葉を待っていた。

いつしか鼓動は尋常じゃないほどの速さで波打ち、私は息をするのさえ侭ならなかった。

「……でも、彼女いらっしゃいますよね?」

なんとか声を振り絞り、小さな声で私は尋ねる。

聞かない方が良かったのか、聞いて正解だったのか…。

この時の私にはまだ分からない。



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