【短編】お願い、ヴァンパイア様
「吸血鬼に、恋をしたのね」

 淡々と言われ、わたしはドキリとした。

まだ何も言っていない。


「…わたし、『牙』のせいなんかじゃない。『レン』という彼自身が、大切なの」


 説得力に欠けるかもしれない。

だけど、ようやく気づいたんだ。


 レンが好き。


「………」

 ずずず、と黙ってお茶をすするの神崎さん。

答えてくれないので、わたしは必死になって想いを告げる。


「レンを、あの魔術書に封印した人がわかったわ。彼と、彼女の想いにわたしはまだまだ遠い―……」


 わたしなんて、好きな人に振り向いてほしいとしか思わなかった。

レンの幸せを願って、自分の想いを浄化させるミーナさんに叶うわけがない。


 けれど、今はもういない彼女。

今ならわたしがそばにいてあげられるんだ。


「レンには、笑っていてほしいから」


 さっきショッピングモールで笑いかけてくれたレンを、もう一度。

次々と浮かび上がるレンの姿にはせていたわたしに、神崎さんの通る声が響く。


「そうか。……それ相応の覚悟があるならば、一つ提案がある」


 背筋を伸ばした神崎さんは、ふと顔を緩める。

わたしは固唾を飲み込んで、彼女の言葉を待つしかなかった。



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