満月の銀色ススキ
五章
夜。
漸く止んだ雨。

うっすらと見える月の光に、露が輝く。

少し冷たい風がそっと通り過ぎた。


「ススキさん」


望月は林の中で静かに声を発した。

カサリと草をかき分ける音。
それに合わせて茶色の髪が覗いた。


「…まだ、顔色悪いよ」


「平気」


「でも」


微笑む望月はまだ青白い。
手を取れば、氷のようだった。

そっと、取られた手を離す。


「心配、する必要ないんだよ」


にっこりと望月は笑顔を作った。

拒絶。
初めて、そう感じた。

心の中に浮かぶ焦燥感。
望月を突き放したとき、彼女同じように感じたのだろうか。

ススキは行き場をなくした手を静かに下ろした。
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