満月の銀色ススキ
嬉しかった。

純粋な気持ちが。
本当の自分に歩み寄る姿が。

愛しかった。


「…元の姿だと、話せないから嫌だ」


柔らかな声で、ススキはそれだけ言った。

顔と顔の距離。
それが近い中、ほんのり染まった望月の頬。

ススキの言葉で、更に赤味を増した。


「ススキ…さん?」


「なに?」


視線がぶつかる。

満月のような黄色い瞳。
柔らかな優しさが含まれた眼差し。

それに射抜かれて、心臓が大きく跳ねた。


「ち…近くて……死にそう…なんです、が…」


しどろもどろに言葉を紡ぐ。

視線を合わせない望月に、ススキは笑った。
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