窓越しのエマ
通りの左手には雑木林が広がり、右手はひし形のブロックが積み上げられた擁壁となっている。

その擁壁の切れ目に短い石段があった。

エマにつづいて石段を上ると、そこは小さな公園だった。

猫の額ほどの小さな砂場と、赤錆の浮いた滑り台しかない、廃れた公園だ。人影はひとつもない。

公園の奥は金網のフェンスで仕切られていて、そこから海が一望できた。

潮の香りが風に乗ってここまで届いている。


「ねえエマ、さっき言ってた帰る場所ってこの公園のこと?」


「違うわ。ちょっと寄り道してみただけ」


絶えず吹きつづける海風がエマの前髪をめくり上げ、つるりとした額が露わになっている。


「海岸に戻ろう」

僕はもう一度エマに言った。


「どうして?」


「こっちのほうは……あまり好きじゃないんだ」


「こっちのほうって?」


「山のほうだよ。奥には何か……よくないものがあるような気がするんだ」


エマはしばらく黙って僕を見ていた。

エマの澄んだ黒曜石のような瞳でじっと見つめられると、何となく咎められているような気がして、僕は目を逸らしてしまった。
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