嘘で隠された現実(リアル)
「ねぇ‥朱月、何かあった?」


私が座っている朱月に声を掛けると、彼はゆっくりと私に視線を合わせた。

その表情を見て、私は何も言えなくなった。

無表情でありながらも、その目はとても冷たかった。


「悪ぃ‥今日は先に帰らせてもらう」

朱月は荷物を持ち、立ち上がった。


「ま、待ってよ!朱づ‥彗ちゃん…?」


私の腕に加わった強い力。

それは、朱月を追い掛けようとする私を妨害していた。


「行くなよ…」


小さく呟くような声だったからだろうか。

それは、あまりに切なく聞こえた。
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