嘘で隠された現実(リアル)
「彗ちゃん…?」


「‥追いかける必用なんか、ねぇじゃん…」

彗ちゃんはそっと、私の腕から手を離した。

「あんな、わけ判んねぇヤツのことなんか…」


その言葉に、私は驚いた。

このメンバーの中でなら、真っ先に朱月を追い掛けそうな彗ちゃん。

その彗ちゃんが、私を引き止めるような言葉を発したことは、かなり意外なことだった。


「でも…」


「何だよ?」


私を見つめる彗ちゃんの目は真剣だ。

彗ちゃんといつまでも視線を合わせておくことが、私にはできなかった。


「心配だよ。もしかしたら、あたし達に心配掛けたくなくて、言えないのかもしれないし…。朱月は優しいから」


「優しいことが、いつもいつも良いとは限らねぇだろ」


「彗ちゃん?」


「優しいから、残酷なんだろ!?」


「え…」


彗ちゃんは自分の口から出た言葉に、後悔するような表情を見せた。

そして、苦しげに視線を落とした。
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