嘘で隠された現実(リアル)
カップの中身を零さないようにということと、音を立てないようにということに注意を向けながら、私は膝の力を借りて、ドアのような窓を開けた。

そこには、手すりに凭れかかるように腕を置き、暗い空を見つめている朱月が居た。


「何してるの?」


朱月が遠くに感じた‥月並みな表現だが、本当にそうで、今にも何処かへ行ってしまいそうな朱月を引き止めるように、私は彼に声を掛けた。


「なんだ、天音か」


「なんだって‥酷くない?」

私はいつもと変わらない朱月の声色に安堵しながら、右手に持っていたカップを差し出した。

「はい、差し入れ?」


「何で疑問系?」

朱月は笑いながら、そのカップを受け取った。

「サンキュ。実はちょっと寒かったんだよな」


「それなら中に入ればいいじゃない。いつから居たの?」


しかし朱月は質問には答えず、弱々しい笑いをこぼし、カップを口元に運んだ。


「朱月?」


「やっぱストロベリー・ベリーか。お前よっぽど気に入ったんだなぁ。さっきからこればっか飲んでただろ?」


「えっと‥そうだっけ?」


私は自分の顔が赤いのではないかと不安になって、衝動的に朱月から顔を背けた。

馬鹿みたいだという自覚はある。

しかし、少しくらい自惚れてもいいだろうか?

朱月の言葉は、まるで「ずっと天音を見ていた」と意訳ができる気がして、それがとても嬉しかった。
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