恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「悪いこと言わないから……ハァ、ハァ……今度だけは帰ったほうがいいと思うっ」

「………」

「今のうちにおやっさんの顔を見に行っとかないと……ハァ、ハァ……あとできっと後悔することになると思うっ」


「死ぬ前に……おやじに会っといたほうがいいってことか……?」


陽気な顔をしたウサちゃんの着ぐるみの中から、おにーちゃんのシリアスな感じの声が聞こえてくる。

「ハァ、ハァ……」

あたしは肩で息をしながら、大きくうなずいて見せた。



      ×      ×      ×



あたしがわざわざ呼びにきたことに対して、おにーちゃんもさすがにただならないものを感じたのか、とりあえず浅草まで連れ帰ることにはなんとか成功した。

だけど往生際が悪いってゆーか、まだおやっさんに会うのをためらっているのか、仲見世のおみやげ屋さんに面白そうなものを見つける度に、アッチにフラフラ、コッチにフラフラして、なかなか病院に行こうとしないおにーちゃん。
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