恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
本当は今日の会には出席したくなかった。

カウンター席に座っているのは、背を向けることによって、おにーちゃんとやまぶきさんのツーショットが目に入らないようにするための、あたしなりのささやかな抵抗だった。


「ヘイ、イカのサビ抜き、お待ちっ」

ところで、黄ぃちゃんは“わさび”がダメらしくて、さっきからサビ抜きのばっか頼んでいる。

実は彼女、3コ上の19歳なのに、むしろあたしより子供みたいで、今日の私服も軽くゴスロリはいってるカンジだ。



「英雄くんもこれで年貢の納め時ってカンジかな? 永遠のガキ大将も、家庭を持つことで、少しはオトナになってくれるんじゃないかって、あたし的には期待してるんだけど」

カウンター席に座っているあたしの背後から、白鳥さんの声が聞こえてくる。

彼女、そーとーお酒が強いらしく、さっきチラッと見たとき、顔はちっとも赤くなっていなくて、あいかわらず小麦色のままだった。

「ぼ、ボク、センパイのこと、死ぬまれ忘れらいと思うっ。舞さんと一緒にセンパイんちのせんべい、ちょくちょく買いに行くよっ」

感極まった感じで、あとちょっとで泣き出しそうな感じの紫苑さんの声が、背後から聞こえてくる。ビミョ~にロレツが回ってない。彼はお酒に弱いらしい。
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