恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「おぅ、売上げに貢献してくれや。お前んちは大金持ちだから、なんなら店のせんべい全部買い占めてくれてもいいんだぜ」
上機嫌なカンジのおにーちゃんの声が、背後から聞こえてくる。
「紫苑くん、浅草に来たらココ(大政寿司)に寄るのも忘れちゃダメだよ」
年上の白鳥さんが紫苑さんの言葉の足りない部分を補完する。
「そうそう、もちろんコッチにも寄らせてもらうよっ。約束するっ」
かつて同じステージに立って、ヒーローショーのアトラクションをしていた3人だけど、こんなふうに一同に会するのは、もしかしたらもうこれが最後なのかもしれないね。
そう思うとアトラクション関係者じゃないあたしでさえ、なんだかしんみりとしたキモチになってしまう。
それにしても集まった人数の多いこと、多いこと。
おにーちゃんがヒーローショーをやってたときの仲間なら、何人かは知ってるんだけど、今夜は全然知らないヒトたちがけっこー大勢集まってて、それだけでおにーちゃんがどれだけみんなに慕われてたかが分かる。
やがて……、