聖職者


マーキスは真っ白な世界を一歩ずつ踏みしめて、慎重に歩いていった。

その後に凛が続く。

そうして数歩、歩いたときだった。

「なっ!?」

真っ白だった世界がいきなり漆黒の闇に変わったのだ。

驚いた凛が声をあげた。

マーキスは何も言わずに右手の平を左手で撫でた。

マーキスの聖痕は右手の平にある。

マーキスは聖痕を撫でたのだ。

そうして少し力を込める。

すると聖痕がオレンジの光を帯び、まるで照明のようだ。

淡く優しい光は闇をよく照らす。

暗闇で光を放つのは、敵に居場所を教えているのに等しい。

だが、この状況では仕方がない。

そもそも、この空間に入り込んだ時点で敵に居場所は知られているだろう。

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