聖職者


マーキスと凛は闇の中を、オレンジの光だけを頼りに歩き続けた。

二人とも、一言も発さない。

足音のみが二人を包む。

そうして、どれ位歩いただろう。

マーキスは数メートル先に、何かの存在を感じた。

凛も感じたようだ。

マーキスは慎重に近づく。

そして、息を呑んだ。

咄嗟に、この光景を見せるまいと後ろを振り返り、凛を抱き締める。

「どうしたの?」

凛は驚いて、マーキスに問う。

だが、マーキスは何も言わない。

マーキスがあまりに強く抱き締めるので、凛は息苦しくなって彼女の胸から顔を出そうとした。

そうして、見てしまったのだ。

マーキスが見たもの。

それは暗闇に横たわる、血まみれの慎と京介だった。

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