学園(序)
しかし、吟ネエが何かを企んでしまったらしく、笑顔ではあるのだが悪人の微笑みになっている。

「お酒なら買えないぞ。今月は金ないし」

「ノンノン、お前の言うとおり楽しむアル。でも、変わりに少し生気を吸わせるアル」

「せ、生気?」

よからぬ予感がした。

しかし、予感よりも早くに動いたのは吟ネエだ。

気づいた時には吟ネエの口と俺の口が重なり合っている。

突然のことだったのでラッキーとか、幸せだとか考えられない。

「む、むー!」

吟ネエの舌が蛇のような動きで口の中を動いている。

何秒経ったかわからないけども、しばらくして吟ネエが満足して唇を離す。

「ふー、メロンソーダの味アルな」

俺は吟ネエの口の中を味わう余裕なんかなかった。

大切なファーストキスが奪われてしまったようだ。

だからといって、騒ぎ立てようとも思わなかった。

ただ、あまりに唐突だった。

しかし、キスをされただけなのだが、一緒に生気を吸われたのだろうか。

「はあ」

「ま、犬に噛まれたとでも思えばいいアル」

時間が経って、自分のされた事を振り返っても嬉しさなんかなかった。

感情は何も浮かび上がってこなかったんだ。

吟ネエ、何でいきなりこんな事をしだしたんだろう?

今まで何もしようとしなかったのにな。

今は深く考えても答えなんか見当たらない。

無理矢理キスをされたからといって、俺は吟ネエのことを嫌いになったり、物凄く好きになったりはしなかった。

手段が強引過ぎて、切り替えが出来てないだけかもしれない。

吟ネエは先に廊下から去ったようで、俺一人が残されていた。

「はあ、犬に噛まれたか」

今はそう納得させるしかなかった。

吟ネエからキスをされても、どちらに積極的にアプローチをかけるか、踏ん切りがつかなかったからだ。
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