学園(序)
「はあ、もういいや」

考える事が疲れてきた。

「もっとビンビンな態度でないと、女が寄り付かないアル」

見てもない女の人に寄り付かれても嬉しくない。

でも、沈んでると吟ネエも遠ざかるか。

「そうだな。吟ネエの言うとおりか」

もう一度、吟ネエの手を掴む。

何かあっさりとした感じで握る事が出来るようになってる。

嫌だったら嫌って言いそうだけど、何も言わないからな。

まだ、はっきりした気持ちはわからないけど今はこれでいい。

吟ネエは良い男が通ると余所見をしていたけど、リードに繋がれた犬のように引っ張りながら家に帰った。

家に帰ると、肉じゃがの匂いが漂っている。

「おいしそうだな」

「渚め、料理の腕を上げたアルな」

匂いだけでわかるのか。

俺は今まででも満足できていたけど、吟ネエの舌は肥えているのかもしれない。

しかし、親に対しても上目線って、失礼だと思うんだがな。

親しき仲にも礼儀ありだぜ。

「吟ネエはさ、料理できるの?」

吟ネエは天才肌だったりするので、出来ないわけではないと思う。

「渚においしくなる方法を教えたのは私アル」

「嘘だろ?」

「夜のテクニックを教えたのも私アル」

後者は本当っぽくて、怖さすら覚える。

しかし、テクニックを教えるってどうやったんだ?

親子でふしだらな行為を行ったんじゃないだろうな?

もはや、吟ネエが料理を教えたことなど脳の中にはなかった。

気付けば、吟ネエの手は離れており、玄関に俺一人がニヤケ面で立っていた。
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