破   壊
 だが、私にはそこに書かれていた内容が信じられなかった。

 私が彼から受けた印象からすれば、こんな答え方はしない。

 殺せるものなら殺してみれば……

 と、不敵な笑みを浮かべる筈だ。

 彼の中で、自分以外の人間は、全て彼に平伏す存在である。

 生殺与奪権を持った絶対神

 神という言葉を彼は否定し、運命と表現していたが、ようは全能の神と同一なのである。

 彼のそういった考えからすれば、余りにも弱々しい。

 もっと攻撃的な言葉があってもいい筈だし、無言のまま鼻で笑う方が、より彼らしい。

 私が調べた彼についての分析結果だと、その辺りが違っている。

 精神医学は門外漢だから、理論的に説明する事は上手く出来ない。

 しかし、直接言葉を交わした時に、私は肌で感じたのである。

 理屈ではない。

 人間が備わっている五感が、彼というものをそう捉えたのだ。

 適当にあしらわれてる……

 資料を読み進めているうちに、そう思えて来た。

 そんな私は、ある事に気付いていなかった。

 彼に対する拒絶反応が、少しずつ薄らいでいた事に。





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