好きと言えたら
「大ちゃん!!」
玄関を飛び出し大ちゃんを呼び止める。
「あら?北田さんじゃない。こんばんわ。」
顔は微笑んでいるが
どこか敵意を持った目をして私を見ている。
「麗奈先生…」
「大輔の教科書じゃない?届けてくれてありがとう。夜遅いから早く寝なさいね。行きましょ大輔。」
こんな時間に
部屋を訪ねるなんて恋人同士だからだよね?
やっぱりあの頃から二人は付き合っているんだ。
「……さよなら!」
その場にいるのが辛くて
無我夢中で部屋に戻った。
「あみ待てよ!!」
待つわけないよ。
隣にはあんな綺麗な彼女がいるんだもん。
私には勝てない。
さよなら大ちゃん。
さよなら、私の初恋。
部屋に戻ると我慢していた涙がこぼれた。
「ヒック、だいっちゃぁん…だいっすきっなのぉ…」
大ちゃん。
好きと言えたらどんなに楽なんだろう?