引き金引いてサヨウナラ


「僕は、弘が行くから行くんじゃない。晴香も関係ない」


美菜に近寄り、叶は拳をぎゅっと握り締めた。


「僕は、美菜の世界を守りたいんだ。
美菜は、僕が世界の色を教えてくれた、と言ったろ?
その色を、僕は僕の全てを使って、証明したい」


「わかんない……わかんないよ……私のせいなの?」


声を、体を、空気を震わせて、美菜は言葉を絞り出した。


叶がこの町の色を変えてくれたと、それを言わなければ、良かったのだろうか。


叶は美菜の体を抱き寄せ、落ち着かせるように背中をポンポンと柔らかく叩く。


「ごめん、美菜のせいじゃないよ。
僕のわがまま。僕の……僕だけの秘密」


だから泣かないで、と言われて初めて、美菜は自分が涙を押さえきれていなかったことへ気付いた。


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