引き金引いてサヨウナラ
叶が報告のために上官に声を掛けると、いつの間にか隣に和也が来ていた。
小隊長である和也が上官に報告するならば、叶はただそれを黙って見ているしかない。
和也は叶に構わずに、淡々と上官に報告をする。
叶はぐるぐると思考を回転させ、和也の言葉を頭に入ってこないようにした。
そうしないと、激情を上官にぶつけてしまいそうだったからだ。
和也からの報告が一通り終わると、上官はたった一言「ご苦労」と言っただけだった。
叶は拳をきつく握り締め、上官を睨む。
人が、死んでるんだぞ――
だが上官は手元の書類を見るだけで、叶の鬼気迫る態度には気付かない。
そのことが、叶をやるせない気持ちにさせた。
所詮、僕らは――
みるみるうちに、叶の中から覇気が消えていく。
それでも、自分たちの行動は、何一つ無駄にならないと信じていた。