引き金引いてサヨウナラ
「美菜も、来てくれてありがとな」
弘は最後にそう言って、悠然と微笑んだ。
美菜は弘に向かってちょっと口角を上げ、晴香を支えるようにして病室を出て行った。
そのあとを追うようにして、叶は弘に帰る旨を伝え、病室を後にした。
薄暗い病室に一人残された弘は、シーツをぎゅっと握り締めて肩を震わせた。
「美菜っ」
病室の外で、叶は美菜の背中に声を投げた。
美菜は振り向かずに、晴香を気遣いながらも歩みを止めた。
「少し、独りにして」
晴香は美菜に預けていた体を離し、そう言った。
「叶、話があるみたいだし」
「悪い、晴香」
叶の謝罪に、晴香は心ここに有らずな様子で力無く首を振る。
「先、帰るね」と、戸惑っている美菜に声を掛け、歩み去っていってしまった。