引き金引いてサヨウナラ
向かい合いながら、美菜と叶は無言で立ちすくんだ。
だいぶ時間が経った頃、ようやっと叶は美菜に話し掛けた。
「……元気だった?」
美菜は小さく頷いて、「叶は?」ときき返した。
「元気」
そこでまた会話が途切れてしまう。
叶は、ゆっくりと手を握ったり広げたりしながら、やっと美菜に目を向けた。
何か言いかけようとして、また口をつぐむ。
美菜は気まずそうに視線を外していたから、そのことに気付かなかった。
再び開いた叶の口から出たのは、とりとめのない言葉だった。
「……うん、元気だったなら、いいんだ」
そして「ひきとめてごめん」と言って、叶はその場を去ろうとした。